A-Book・B-Book・C-Bookの実態 ― ブローカーの内部化構造を整理する
業界構造
ブローカーの執行モデルはA-Book・B-Book・その混合の3つに大別されるが、C-Bookは定義そのものが業界内で割れている。
海外FXブローカーを比較していると、必ずといっていいほど出てくるのがA-Book・B-Book・C-Bookという分類だ。この記事は特定のブローカーを「B-Bookだから悪い」「A-Bookだから安全」と評価するものではなく、それぞれの仕組みと、規制当局が何を懸念しているかを整理するものだ。
A-Bookとは何か?
A-Book(エージェンシー)モデルでは、顧客が注文を出すと、ブローカーはその場で外部市場にポジションをそのまま流し(オフセットし)、自らその反対側のポジションを取ることはしない。ブローカーの収益はスプレッドやコミッションといった手数料に由来し、顧客の損失そのものからは生まれない。ブローカーの利害(注文を成立させ、きちんとヘッジすること)と顧客の利害(注文を成立させたいこと)が同じ方向を向くため、ブローカーと顧客が直接対立する構造にはなりにくい、と説明される(出典: EffectiveSoft)。
B-Bookとは何か?
B-Book(ディーリングデスク/内部化)モデルでは、ブローカー自身が顧客取引の直接の相手方となり、そこで生じる市場エクスポージャーを外部にヘッジせず自社の帳簿上に抱え込む。この場合、ブローカーの損益は顧客の損益と逆方向に動く――顧客が損をすればブローカーが得をし、その逆もまた然りという関係になる。ブローカーが自社の総エクスポージャーを別途ヘッジしない限り、この構造は解消されない(出典: QuadCode)。「ディーリングデスク(DD)」という呼び方は、B-Book/マーケットメイカーとほぼ同義語として使われる。ブローカー自身の教育コンテンツでも、STP・ECNと並ぶ3分類の一つとしてDD方式が紹介されている(出典: AXIORY公式)。
なぜブローカーは内部化(B-Book)を選ぶのか?
A-Bookブローカーの収益は、外部の流動性プロバイダーへ流れる取引量に依存する――つまり顧客の取引活動量に連動する仕組みだ。一方でB-Bookブローカーは取引結果そのものを収益・コストとして抱える。英国の金融行為監督機構(FCA)は、業界宛ての通達(Dear Portfolioレター)の中で、この構造について「顧客が実際よりも頻繁に、あるいは大きなロットで取引するよう仕向けられ、かつ市場リスクが十分にヘッジされていない場合、CFDプロバイダーは顧客の損失から直接利益を得ることができる」という趣旨の懸念を示している(出典: Pinsent Masons。FCAの原文PDFはFetchでのテキスト抽出ができず、法律事務所による引用を経由した確認にとどまる)。
B-Bookは投資家にとって何を意味するのか?
FCA自身の公式ページは、CFD(差金決済取引)を「すべての個人投資家に適しているとはいえないハイリスク商品」だと明記し、業者が顧客を「プロ顧客」に格上げさせることで個人投資家保護を外れさせるケースにも触れつつ、2024年12月・2023年3月の通達で「CFDプロバイダーのビジネスモデルに内在する利益相反」を監督上の重点課題としていると述べている(出典: FCA公式)。FCAが過去に実施した審査(2015年7月〜2016年6月の12か月間、「2018年Dear CEOレター」で言及)では、調査対象のCFD提供者・販売者を通じて助言つき・裁量つきいずれかの形でCFDを購入した個人投資家の76%が損失を出しており、審査対象となった全業者で利益相反管理の甘さが確認されたという(出典: FCA公式ページ。同ページが2018年Dear CEOレターに言及しているが、レター全文はこの調査では未取得)。
この構造への懸念は英国だけの話ではない。EU/ESMAは2018年、CFD商品への介入措置として、すべてのCFD提供業者に対し「直近12か月間で損失を出した個人投資家口座の割合」を標準化されたリスク警告として開示することを義務づけた。同時に、通貨ペアなど資産のボラティリティに応じたレバレッジ上限(主要通貨ペアで30倍、暗号資産で2倍)、証拠金維持率50%でのロスカットルールの標準化、口座単位でのネガティブバランスプロテクション(強制ゼロカットの規制版にあたる仕組み)も導入されている(出典: ESMA公式)。
「C-Book」とは何か? なぜ定義が割れているのか?
ここまでのA-Book・B-Bookに比べ、「C-Book」という言葉の使われ方は一貫していない。当サイトが確認できた範囲では、少なくとも3通りの説明が存在する。
- 動的な注文振り分け説: 「勝率・保有時間・取引量などをもとに継続的に分析し、収益性の高いトレーダーの注文は外部の流動性プロバイダーへ(A-Book)、そうでないトレーダーの注文は内部で抱える(B-Book)、という具合に注文ごとに振り分けるアダプティブなリスク管理モデル」とする説明(出典: EBC)。
- 単純な混合説: 「一部の注文はA-Book、一部はB-Bookという単純な混合をハイブリッドモデルと呼び、それが(あまり一般的ではないが)C-Bookとも呼ばれる」とする説明。この情報源自体が、「C-Book」という語が業界で一般的に使われているわけではないと明言している(出典: Brokersome)。
- 第三分類説: 「ブローカーの執行モデルは、マーケットメイク型のA-Book、ノーディールリスク型のB-Book、そしてハイブリッド型のC-Bookという3モデルのいずれかだ」として、C-Bookを動的な仕組みというより単なる第三の分類名として扱う説明(出典: EffectiveSoft)。
FCA・ESMA・金融庁のいずれも、「C-Book」を公式に定義した規制文書は見当たらない。ということはつまり、この語は規制当局の用語ではなく業界・ベンダーが使う俗称であり、単純な混合を指すのか、トレーダーごとの動的なルーティングを指すのか、書き手によって指しているものが違う、という点をそのまま押さえておく必要がある。
プロップファームとA/B/C-Bookはどう関係するのか?
業界情報源の多くが指摘しているのは、リテール向けプロップファームの「ファンド口座」の大半が、合格後も業者内部の模擬台帳上で運用され続けているという点だ(プロップファームとは何か参照)。つまり構造的には、外部市場へリスクを渡すA-Bookとも、自社の実際の資金をリスクにさらす古典的なB-Book(ブローカー自身の資金が本当にリスクにさらされている状態)とも異なり、手数料収入によって成り立つシミュレーションに、裁量的な出金義務が付随した形に近い。これは特定の業者がB-Bookブローカーを「プロップファームと偽っている」という主張ではなく、構造上の観察にとどまる(出典: Spotware、Fintokei公式)。
よくある質問
A-Book・B-Bookのどちらが良いブローカーか? 当サイトはこの評価を行わない。A-Book/B-Book/C-Bookは執行モデルの分類であり、単独でブローカーの優劣を決める指標ではない。
自分が使っているブローカーがA-BookかB-Bookかはどう分かるか? 当サイトが確認した範囲では、「自社はX%がA-Book、Y%がB-Book」という数字を公式に開示しているブローカーは見つかっていない(未確認)。
日本国内のFX業者にもB-Bookは存在するのか? この記事は海外業者の文脈を中心に整理したもので、国内登録業者ごとの執行モデルの分類までは検証していない(未確認)。
各社の規制状況・金融庁警告リスト掲載の有無はブローカー比較で確認できる。用語の定義一覧はプロップファーム用語集、プロップファームの資金供与モデルとの構造比較はプロップファームとは何かにまとめている。
出典
- A-Book, B-Book & Hybrid Brokerage Models Comparison — EffectiveSoft(2026-07-11確認)
- A-Book vs B-Book vs Hybrid Brokerage Models Comparison — QuadCode(2026-07-11確認)
- A-Book vs B-Book Risk Management in CFD Brokerages — Tapaas(2026-07-11確認)
- What is an ECN Forex Broker? — AXIORY(2026-07-11確認)
- FCA warning to CFD providers — Pinsent Masons(2026-07-11確認)
- Contract for differences — FCA(2026-07-11確認)
- ESMA adopts final product intervention measures on CFDs and binary options — ESMA(2026-07-11確認)
- C-Book Broker — EBC(2026-07-11確認)
- Hybrid Book (A+B-Book) — Brokersome(2026-07-11確認)
- Do prop firms use real money? — Spotware(2026-07-11確認)
- Fintokei サポート記事 — Fintokei(2026-07-11確認)
タグ: A-Book / B-Book / C-Book / ブローカー / 業界構造
出典
- A-Book, B-Book & Hybrid Brokerage Models Comparison
- A-Book vs B-Book vs Hybrid Brokerage Models Comparison
- A-Book vs B-Book Risk Management in CFD Brokerages
- What is an ECN Forex Broker?
- FCA warning to CFD providers
- Contract for differences
- ESMA adopts final product intervention measures on CFDs and binary options
- C-Book Broker
- Hybrid Book (A+B-Book)
- Do prop firms use real money?
- Fintokei サポート記事(会社情報)